●スイスのワイン16


子供が主役のリュトリのワイン祭り
ブドウの収穫が終わると、スイスでも各地でワイン祭りが開かれます。
スイスではヌーシャテル、ルガノなどのパレ-ドが有名ですが、村の噴水からワインが流れ出るというのはちょっぴり大袈裟です。

ラヴォー・エキスプレスが出発する,レマン湖畔のリュトリの村では、9月の終わりに、子供中心の仮装パレードで賑わいます。

仮装ごっこの大好きな子供達、そしてそれを嬉しそうにながめる両親や祖父祖母、リュトリの村は秋の一日、着飾った子供達で溢れます。パレードの先頭にはスイス国旗の四つの隅を持った高学年の子供が進み、大人達はその中に小銭を投げ入れます。こうして集まったお金は、次の年の子供達の林間学校の費用に充てられるということです。

でも子供達ははじめは張り切っていても、だんだんとお疲れムード、代わって大人達がワインタイムへと突入です。

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●スイスのワイン15


収穫の秋は、これすなわち食欲の秋。
ワインの出来を確かめながら、大いに飲み、食う!

ビュンドナー・フライシュと呼ばれる乾燥ハムは、このヴァレー地方では、
ヴィヤンド・セッシェと呼ばれ、文字通り乾燥肉(後ろの赤い方です)。燻製ではなく、空気乾燥だけで2年くらい納屋に吊るして作る絶品です。紙のように薄く切って食べます。

チーズの種類も日本で言えば、鉢一杯の漬け物なみ。お盆に山盛りのチーズを見て、スイス人の友人達が、とても嬉しそうな顔をしたのが思い浮かびます。

そしてこの地方の秋の定番が、ブリソレと呼ばれる焼き栗。写真のような出来上がりで、ブドウの実とチーズを併せて食べると、そのホクホク感がたまらないといいます。栗は,同じく秋の味覚であるジビエ類(秋は狩猟が解禁になって、野生の鹿などが食べられる)の付け合わせにも使われますが、
日本の和菓子の栗の使い方などを見ると、繊細さには雲泥の差があります。
栗林はけっこう珍しく、日本の小布施と姉妹提携している栗林を見せてもらいましたが、わざわざ行くほどのものでもありませんでした。
~~~ところで今年のボジョレ・ヌーボーは、なかなかのお味ですね!
●スイスのワイン14




秋のブドウの収穫時期になると、普段は無人に近いブドウ畑から、にわかに大勢の人声が聞こえてきたりして驚かされます。空にはブンブンとヘリコプターが飛んで急斜面の収穫物を上から運び去り、下に運ぶものは,モノラーユと呼ばれる一本軌道の乗り物に箱を並べて下ろします。しかしブドウの実摘み取りは今でも人力が基本です。


スイスやヨーロッパのブドウ畑はご覧のように、地面の直植えで、ブドウ棚ではないので、初めて見た日本人は、これがブドウ畑には見えないと言い張ります

スイス第一のブドウ生産地のヴァレー地方では、自宅のブドウ畑で栽培して
収穫したものは地元のワイン生産者や農協に持ち込み、ワインにしてもらうシステムが盛んで、こうしたワイン小作人がたしか2万軒もあると聞きました。こうやれば、自前のワインに自前のラベルを作って楽しむこともできるわけです。持ち込みには、厳重な検査があり、収穫時期には検査員が、あちこちのワイン生産業者を見て回ります。


美人の検査員、調べるのは糖度だったか?
●スイスのワイン13


レマン湖を眼下にブドウ畑の散策、とカッコ良く行きたいのですが、実はとっても暑い!なにしろ三つの太陽を抱えるラヴォー地区のブドウ畑、日陰などありません。それにブドウ畑は坂ばかり。
そこで足代わりにと数年前に登場したのが、この「ラヴォー・エキスプレス」。
遊園地のミニトレインと同じで、タイヤで走り、無軌道で、総延長32キロもあるラヴォー地方のワイントレイルを,走りまくります。けっこうな坂でもぐいぐい登りますから、崖の多い地形にもぴったりです。

途中の見晴らしの良い地点に、やっぱり試飲所がありました。
グラス一杯3フラン(約280円)。小粋なお姉さんが緊張した面持ちでサーブしてました。運転手もおしゃべり好きで、なにやら日本の戦争の話をした記憶があります。

ラヴォー・エキスプレスは、夏の間、レマン湖畔のリュトリとキュイイーから交代で発車します。所要時間は1時間とちょっと。料金は大人一人13スイスフラン(約1200円)、出発時刻表などは、
http://www.lavauxexpress.ch/horaires_tarifs_int.php?lan=enをご覧ください。

リュトリで出発を待つラヴォ-・エキスプレス
●スイスのワイン12


なにやら気味の悪いラベルですが、その名前も「地獄の熾き火」。
説明文によると、ブドウの味はその下の土壌によって決まり、エペッス村のブドウは、その下に数千年にわたってくすぶり続ける熾き火の熱によって、鋭い味が作られるということです。

断崖絶壁のラヴォー地方のブドウ畑には、所々に断層があり、その断層の向こうとこっちでは、ブドウの味が違って育ち、ワインの味にも影響するのだという話を聞いたことがあります。その時思い出したのは、魚沼産のお米が川向こうと反対側では味が違うという通の言葉、日本酒とワインの共通点が一瞬思い浮かびました。

世界遺産ラヴォーのブドウ畑には、3つの太陽があると言われます。
1つ目は本物の太陽、2つ目は目の前に広がるレマン湖の反射光、そして3つめは急斜面の段々畑に埋め込まれた石垣。この石垣が熱を吸い取って、夜の間も土壌をあたため続けます。この3つの太陽によって、ラヴォー地方の名産ワインが育まれるのだと、ワイン作りたちは言います。
●スイスのワイン11


昭和天皇が、かつて皇后陛下同伴でスイスのブドウ畑をご訪問になったことは、3月頃に書きましたが、その時陛下に自作のワインを献上したのが、写真のサミュエル・ポルタさんです。

当時昭和天皇と同じご年配と見えますが、いまはそのお孫さんが、立派にワイナリーを継承しています。5年ほどまえに偶然スイスで出逢い、日本人の私を見るなり、「僕のおじいちゃんは、あなたのエンペラーにワインを差し上げたんだ」と話しかけてきましたっけ。


そのご訪問は1971年の10月のことで、良子皇后がとても優雅だったと、彼の作るワインの裏ラベルにも書かれています。ワインの名前は「サンタムール」。直訳すれば、聖なる愛。1515年以来作っているということでしょうか?

このようにワイン農家は代々引き継がれているのが特徴で、写真のような看板「サミュエル・ポルタと息子(達)」といった、親子または兄弟で経営している表示をあちこちで見かけます。
●スイスのワイン10


日本ではイタリアンレストランなどで、ハウスワインをデカンタで注文するのは当たり前になってきましたが、その量はお店によってまちまちみたいですね。一本注文するには多すぎる、という場合にデカンタで、となるようです。

スイスでは(多分ドイツでも)、如何にもゲルマン系らしく厳密に、デシリットル単位で注文ができます。1デシはご存知10分の1リットル。1デシ、2デシ、3デシとその時の気分で注文(4デシというのは余り聞かない)できるシステムです。5デシになると今流行りの500ml瓶で出てくることもありますが、こうしたオープンワインは、カラフ(デカンタのこと)と呼ばれる小さな水差しのようなもので出てきます。写真がなくて残念ですが、グラスにもカラフにも目盛がつけられています。1デシは大体グラス1杯です。

オープンワインはこうして自分の好きな量だけ注文できますから、一人で食事をすることが多かった私は、その日の体調(飲みたい気分)に合わせて、好きな量を飲んでいました。とっても便利なシステムです。
5デシを越えると6デシとか7デシとかは飛ばして、ボトルで注文します。太っ腹だから? それとも単なる飲ん兵衛?