[391]『マルチナ・ヒンギス』(E. バリリエ著、鈴木光子訳、1997年刊 )

(20年前の著作ですが、毎回少しずつ翻訳してお届けいたします)
第1章(1):例外中の例外
マルチナ・ヒンギスは、16才という年齢で、ひとつのスポーツが、もっとも過酷な闘いを通してひとつのアートに成り得る事を証明した、稀なる人物である。彼女こそ例外中の例外である。ル・モンド紙の記者が、いみじくもオーストラリアの国際紙で表現した通り、彼女は「絶対的な才能」を持っている。
しかし、だからと言って、彼女に本を献呈するのは早過ぎるのではないだろうか? それより、彼女が頂点に達するか、それとも最後の時を迎えるまで待つべきではなかろうか?
いや、早すぎることはない。たしかにこの「テニス界のモーツアルト」は、人生の夜明けを迎えたばかりではある。しかしこの夜明けはすでに真昼の陽光を放っている。何ヶ月も前から、いや何年も前から、彼女は、「他の誰とも違うプレー」を見せている。それは例えば、ヤナ・ノヴォトナなど、他の選手が認める通りである。
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